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平成18年度 第1回 関東学生法律討論会 問題 
国会議員Yは、衆議院社会労働委員会において議題であった医療法の一部改正の法律案の審議に際し、同法律案の問題点を指摘すると共に、Xの夫A(病院長)にかかわって、Aの女性患者に対する破廉恥な行為等を取り上げて政府委員に質疑をした。その翌日Aは自殺した。Xは、Yの発言がAの名誉を毀損しAは自殺に追い込まれたとしてYに対して民法709条、710条に基づき損害賠償を求めた。合わせて、Xは、公務員であるYの発言を理由に国に対して国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた。第一審、第二審ともに敗訴したXは最高裁に上告したが、最高裁は上告を棄却した(最高裁平9?9?9三小法廷判決、民集51巻8号3850頁)。
この判決の受け止め方に関して、学説は、憲法51条の国会議員の免責特権の適用として肯定するものと、国民の名誉・プライバシーも憲法上保護に値するから、議員の発言による被害者に法的救済の可能性を認めるべきであると批判するものとに分かれている。
いまだこの学説の対立は解消されていない。
そこで、対立を解消すべく誰でも試論を展開できる。試論を展開するために、いくつか疑問を出してみよう。例えば、憲法17条が公務員による不法行為については損害賠償を何人にも認めるとしながら、他方で、いわば憲法17条の例外として憲法51条は、国会議員の議院での演説、討論、表決に関する院外での責任追及を排除して、議員に損害賠償の責任を認めていない。もしそういえるなら、国民に何らかの損害が生じた場合、その損害の賠償は、国家賠償法や新たな立法という法律レベルで行われるべきものであるといってよいかどうか。また、法の本質からして、憲法51条は、議員が違法または不当な目的で国民の名誉や信用を低下させる発言をした場合とか、虚偽であることを知りながらその発言をした場合とか、これらの損害賠償責任まで排除するものかどうか。しかし、中傷的誹謗のような以上のある範囲で損害賠償責任を排除しないことは政敵に攻撃を加える機会となり、議会制民主主義の発展にとって有する憲法51条の意義に揺らぎは生じないかどうか。
議員の免責特権に関するこれらの疑問に対して総体的にどのような解答がありうるかを論じなさい。

出題 明治大学法学部教授 笹川紀勝先生
 

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