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平成21年度 第58回 末川杯争奪法律討論会 問題 
以下の設例を読んで、下の問いを検討しなさい。不明な事実については、必要があれば、場合分けをしなさい。各問いは独立している。

(設例)
1 Aは、平成20年5月上旬建築請負、建売住宅の建築・販売を業とする会社であるBのモデルルームを見学し、Aの住宅の新築をBに注文しようと決断した。なお、同年8月3日Aは建物建築目的で甲土地を取得した。

2 平成20年5月17日、AとBとの間で、工期・着工時から120日、請負代金1405万円とし、建築材料はすべてBが供給し、契約成立後速やかに内金 140万円を支払い、建物完成引渡時に残金1265万円を支払う旨の建物(木造2階建て、延べ90平米)建築請負契約が成立した。

3 Aは同月21日に請負代金の内金140万円を支払い、同年10月30日建築確認を経て、Bは同年10月下旬に建物土台工事に着手し、同年11月6日には上棟式を行うまでに建物工事が進行した。

4 建築途中、Bは、Aが指定した位置に階段を付けようとしなかったり、また、指定した建材を用いようとしなかったりするなど、気になった部分があり、その都度、AはBに対して、改善を申し入れた。平成20年12月上旬ころ、度重なるトラブルに、Aは、Bとの契約をやめたいと考えることもあった。

5 Bは、平成21年2月5日、建物が完成したとして、新築建物乙をAに引き渡した。

6 前記[4]のような事情もあったので、引き渡しを受けるときにB立会いのもとでAが確認したところ、これらの点は、設計図通りに施工されていることを確認した。とはいうものの、Bについては、各所で欠陥建築のトラブルを起こしているとAの友人の建築士から聞いていたので、念のため、専門家2人に鑑定を頼んだところ、次のような結論を得た。



P建築事務所一級建築士αの鑑定
 「建物乙には、構造耐力上重要な部分で数多くの瑕疵があり、また、仕上下地や造作にも瑕疵が認められる。そこで、その箇所を補修するとしても、そもそも建物乙の基礎には割栗石又は砕石地業がなく、実際には建物上部躯体をいったん解体したうえで正規の方法で基礎から打ち直す必要がある。そのうえで設計図どおりに現況と同等の状態にするための工事期間は2か月半・補修費用は845万円が見積もられ、なお、建物完成までにはさらに費用が必要である。通常の建築行為でも設計図と実際の建築工事とでは、食違いが生じることがあるが、誠意をもってあたっていれば食違いは最小限に食い止められる。しかし、本件の場合構造上重要な部分で設計が間違っていないのに異なる施工をし、標準仕様に劣るものにしていたり、設計上もともと問題のある構造計画がされていることによって、工事段階で改善したものの仕上面でつじつまがあわなくなってしまっている等、本来あってはならない食違いがあり、通常の住宅建築では見られない程度の食違いがあるというべきである。」


 Q設計事務所一級建築士βの鑑定
 「多少作業に雑な部分も見当たらないではないが、外観上はもちろんのこと、機能上も概ね住宅としてはその使用に耐えるだけの完成度は有している。ただ、換気ダクトの取り付けに瑕疵があり十分な換気性が確保されていない。これでは、冬季においてリビングルーム、とくに窓付近に結露の恐れがあるだけでなく、浴室にカビ発生の可能性も高い。これらの現象が長期に継続すると、内装材の劣化の早期進行などの弊害が生じよう。ただ、これとて、従来の家屋では多かれ少なかれ抱えていた問題点であり、乙建物の安全性、快適性、耐久性にいますぐ悪影響が出るというほどではない。以前なら、瑕疵ともいえない程度のものであったかもしれない。他方、換気ダクトは、1階2階それぞれの天井を複雑に通っているため、現在の構造を維持しながら補修するのに3か月、費用630万円が見込まれる。この瑕疵が改善されない場合は、乙建物の価値は200万円減少するものと評価できる。」

7 6記載の鑑定意見のいずれが妥当であるかいまだ不明である。


 

問い
 AB間の契約の性質を考えたうえ、
 (1) 時系列[4]の時点で(設例[5]以降は無視すること)、AはBとの契約を解除することができるか。法的問題点を検討しなさい。なお、この時点で、改善を申し入れた箇所については、Bにより善処されており、他に瑕疵はなかったものとする。また、当時の建物工事の進捗状況は、基礎ができ、1階2階部分のおおよその骨組みができており、工事出来高は全体の約48%であったものとする。
 (2) 時系列[6]におけるα建築士の意見が正しい場合、β建築士の意見が正しい場合それぞれについて、Aがとりうる法的措置について検討しなさい。
 

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