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第16回新島襄記念法律討論会【憲法】

日時:2014年3月1日 於・同志社大学



分野:憲法
指定暴力団相互による対立抗争が激化し、市民が対立抗争に巻き込まれる事態が生じたため、国会は、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」を改正し、次のような規定を制定した。この規定に含まれる憲法上の問題について論じなさい。

第15条の2
指定暴力団等の相互間に対立が生じ、対立抗争が発生した場合において、当該対立抗争に係る凶器を使用した暴力行為が人の生命又は身体に重大な危害を加える方法によるものであり、かつ、当該対立抗争に係る暴力行為により更に人の生命又は身体に重大な危害が加えられるおそれがあると認めるときは、公安委員会は、三月以内の期間及び当該暴力行為により人の生命又は身体に重大な危害が加えられることを防止するため特に警戒を要する区域(以下この条及び次条において「警戒区域」という。)を定めて、当該対立抗争に係る指定暴力団等を特定抗争指定暴力団等として指定するものとする。
(中略)

第15条の3  特定抗争指定暴力団等の指定暴力団員は、警戒区域において、次に掲げる行為をしてはならない。
  (中略)
二  当該対立抗争に係る他の指定暴力団等の指定暴力団員(中略。以下この号において「対立指定暴力団員」という。)につきまとい、又は対立指定暴力団員の居宅若しくは対立指定暴力団員が管理する事務所の付近をうろつくこと。
三  多数で集合することその他当該対立抗争又は内部抗争に係る暴力行為を誘発するおそれがあるものとして政令で定める行為を行うこと。


出題 京都大学 法学研究科教授 土井真一

準備中

☆結果☆
 立論の部:第6位 小椋翔貴
 質問賞:岩澤佑太、畑結里
 総合の部:第4位
  出場校…中央・慶應義塾・早稲田・大阪・立命館・関西学院・関西・同志社・神戸

第63回全日本学生法律討論会【憲法】

日時:2013年12月14日 於・関西大学



分野【憲法】
成年後見制度は、精神上の障がいにより法律行為における意思決定が困難な者について、その能力を補うことによりその者の財産等の権利を擁護するための制度である。例えば、悪徳業者の甘言により重要な財産の売買契約をしてしまった場合に一方的に取り消すことができるなど、成年被後見人が法律行為をすることによって不利益を被ることがないようにし、また、後見人が、成年被後見人に代わって、その所有に係る財産等を適切に管理し処分する契約を行うことなどにより、成年被後見人が適正な利益を享受することができるように設けられた。
成人の日本国民であるXは、医師により、自己の財産を管理・処分することができないとの診断及びその旨の鑑定意見を述べられ、家庭裁判所により、事理弁識能力を欠く常況にあると判断されて、平成19年に後見開始の審判(民法7条)を受けて成年被後見人となっている。他方、Xは、限られた日常的な言葉を使って会話をすることができ、また、保護され介助されて職に就くことができるとされているのであり、実際に、20歳になった昭和57年以降、平成19年に後見開始の審判を受けて成年被後見人となるまでは、棄権することなく選挙権を行使してきていた。
ところが、公職選挙法11条1項1号(平成25年法律第21号による改正前のもの)が、選挙権及び被選挙権を有しない者として「成年被後見人」を規定していることから、Xは、選挙権を付与されないこととされた。そのため、平成21年8月30日及び平成24年12月16日の衆議院議員選挙、平成22年7月11日・平成25年7月21日の参議院議員選挙において、投票することができなかった(平成25年法律第21号による改正が成立していないものと仮定する)。
Xにとってどのような訴えが適切であるかについて検討した上で、この事案に含まれる憲法上の問題点を検討しなさい。

出題 関西大学法学部教授

準備中

☆結果☆
 立論の部:第3位 西村友海(当時3年)
 質問の部:第5位 西村友海(当時3年)
  出場校…中央・慶應義塾・早稲田・大阪・立命館・関西学院・関西・同志社・神戸

第62回末川杯争奪法律討論会【憲法】

日時:2013年10月18日 於・立命館大学



分野【憲法】
ほぼ半世紀にわたり日本国内に居住している外国人Aの子Bは,「出生により外国の国籍を取得した日本国民」 (国籍法第12条)であり,その「外国の国籍を離脱」(同法第14条第2項)しておらず,「日本の国籍を選択し,かつ, 外国の国籍を放棄する旨の宣言」(同項)もしていないが,国籍選択の「催告」(同法第15条第1項)を受けたこともない。 このため生来の二重国籍のまま現在に至っているBは,過去3回の総選挙に連続して当選した現職の衆議院議員であり, さらに現時点では法務大臣政務官も務めている。
このようなBが代表者を務めている「資金管理団体」(政治資金規正法第19条第2項)に対して,Aが「本人の名義」 (同法第22条の6第1項)により過去7年間に合計777万円を献金していたこと,しかも,その銀行「口座への振込み」 (同法第22条の6の2第1項)の事実をBも当初から承知していたことが明るみに出た。この政治献金の発覚により, 法務大臣政務官に就任後も外国籍を離脱していないことを不適格として批判されはじめたBには,さらに, 「外国人……から,政治活動に関する寄附を受けてはならない」(同法第22条の5第1項本文)という禁止 「規定に違反して寄附を受けた者」として「三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金」(同法第26条の2第3号) に処せられるおそれが生じている。また,もしも「禁錮」の実刑判決が確定すると「被選挙権を有しない」 (公職選挙法第11条第1項第2号)ことになり,「各議院の議員が,法律に定めた被選の資格を失つたときは, 退職者となる」(国会法第109条)という規定により,衆議院議員の地位を喪失するおそれも生じている。
こうした状況のなか,AとBの親子は,(1)T長年にわたり日本国内に居住しているAには,国籍にかかわらず, 政治献金の方法による自由な政治的意思表明の権利が保障されるべきであり,外国人の政治献金を全面的に禁止して いる現行法の規定は,憲法に違反してAの権利を濫りに侵害しているほか,Uそれに基づいて「誠実に遵守することを 必要とする」(日本国憲法第98条第2項)はずの国際人権規約により,「いかなる差別もなしに」(市民的及び政治的 権利に関する国際規約第2条第1項),「代表者を通じて,政治に参与すること」(同規約第25条(a)号)が人権とし て保障されているのであるから,この意味においても明白な憲法違反である,と主張している。
また,(2)近親者から政治活動資金の援助を受けている国会議員が稀有というのでもないのに,日本国籍をもたない父 から寄附を受けているBだけが議席を喪失することにもなりかねないのでは,二重国籍を欠格事由としていない現行の 選挙制度や議会制度において著しく不合理であるから,少なくともBの場合にまで現行法の禁止規定を杓子定規に適用す るのは濫用である,とも主張している。
以上の架空事例について,AとBによる主張の当否を検討しなさい。

出題:立命館大学教授 倉田 玲

本問を検討するにあたり、まず結論を述べます。
(1)において、Aの主張は認められません。
(2)において、Bの主張は認められません。
なお、論旨中において政治資金規正法を規正法、市民的及び政治的権利に関する国際規約をB規約とします。

第一に、(1)において規正法22条の5第1項は外国人から献金を受けることを政治団体に対し禁じています。 このことから、規正法22条の5第1項は外国人の政治献金を行う自由を侵害し、違憲ではないでしょうか。
規正法22条の5第1項本文は、政治資金を受け取ることを禁止しています。 これにより、外国人から政治献金を受け取る者がいないこととなり、実質的に外国人の政治献金を行う自由を禁止しています。
そして、政治献金の自由は、信条を同じくする政治家の政治的活動の幅を広げることによって自己の政治的志向の満足を得る点で、政治的意思表明に資する といえます。
したがって、政治献金の自由は憲法21条1項によって保障されます。

もっとも、当該制約の対象は外国人に対するものであり、享有主体性が認められないことから、憲法上保障される権利への制約とはいえないのではないでしょうか。 政治活動の自由については、我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等、日本国民のみをその対象としていると解するものを除き、保障されると考えます。 そこで、政治献金の自由が日本国民のみをその対象としているか否かが問題となります。

この点、規正法3条により政治上の主義若しくは施策の推進、特定の公職の候補者の推薦等のための金員等の寄付を含む広範囲な政治活動が当然に予想されており、政治活動には資金が必要であると言えます。
これより、選挙演説の費用等金銭面は政治家の政治活動において、重要な役割を担っており、そのような役割を果たす金銭面に政治献金という形で外国人が関与することは、政治の動向に大きく影響を及ぼすことになります。
そのため、政治献金の自由を外国人に認めるのは相当ではなく、日本国民のみをその対象としているものと言えます。 よって、外国人の政治献金の自由は憲法21条1項によって保障されず、規正法が侵害しているとはいえません。
第二に、B規約により保障される政治に参与する権利が侵害され、憲法98条2項に違反したといえないでしょうか。
そもそも、日本国憲法の下では、条約が国家間の合意であること、条約の締結には立法権を有する国会の承認が必要なこと、および憲法98条2項の条約遵守規定から、条約は法律に優位します。 これより、条約に違反した法律は憲法98条2項に違反すると解します。
そこで、B規約は人権を守るための条約であるところ、その保障は外国人にも等しく及ぶと思われるため、B規約の適用対象である市民の意義が問題となります。
そもそも、B規約は世界人権宣言と目的を同じくすることから、その解釈にあたっては世界人権宣言の趣旨を斟酌する必要があります。 また、本問で問題となっているB規約25条は世界人権宣言21条1項と関連しています。
そして、世界人権宣言21条1項は、14条、21条2項、3項を鑑み、国民が自国の政治に参与する権利を保護する目的で定められたものであり、外国人に同様の権利があることを当然に予定しているものとは考えられません。
以上より、B規約25条にいう市民もまた、国民を意味するものであると解します。 よって、外国人の政治献金を全面的に禁止している規正法の規定は、B規約に反しておらず、憲法に違反していません。
第三に、(2)において、近親者からの政治献金が認められていますが、Bの父であるAが外国籍あるという理由のみで政治献金が禁止されているとして、規正法の規定を杓子定規に適用するのは、濫用ではないでしょうか。 規正法22条の5第1項本文における構成要件は、寄付を受けたこと、寄付が政治活動に関するものであること、寄付をした主体が同法に定める者であることです。
まず、BはAより777万の寄付を受けており、そしてBが所属するのは資金管理団体という政治団体であるため、政治活動に関するものであるといえます。
では、寄付の主体たるAは法人または組織でないことは明らかなところ、規正法に規定する外国人に当たるでしょうか。 本問において、Aは外国人ではあるものの、半世紀以上日本に在住していることから、実質的には日本に土着化しており日本人と同視しうるものともいえます。 このようなAまで本項に規定する外国人に該当するものといえるでしょうか。 本規定が政治献金という政治的行為の一形態に対する規制であるため、外国人の意義が問題となります。
文言上、規正法22条の5第1項は、選挙に関するか否かを問わず、外国人から政治献金を受けることを禁止しています。 そもそも、本規定の目的は外国勢力による政治的影響の未然的防止とともに、政治資金の適正な処理方法を示し、それを遵守させることによって政治家の財政の透明性を担保することで政治に対する国民の信頼を保護することにあります。  とすれば、外国人から政治献金を受ける自由は一律に禁止すべきだともいえます。
しかし、政治家にとってビラ配りやメディア露出のような表現活動は意思表示の手段として主要な地位を占めるものであり、これらの活動には莫大な資金が必要です。 とすれば、政治活動の主要な資金源となる政治献金を受ける自由は憲法21条1項を実質的に保障する上で重要な権利といえます。
さらに、制約の態様として刑罰を科していますが、刑罰は国権の作用による最も峻厳な制裁であり、権利の規制に対する最たるものです。 このような、規正法22条の5第1項の文言、趣旨、目的、規制される自由の重要性、および制約の態様からすると、同項に言う外国人とは、日本の政治的意思決定に影響を及ぼし、それにより日本の政治が左右されるおそれが認められ、さらに当該寄付によって国民の信頼を害するような外国人に限ると解します。
では、Aは日本の政治的意思決定に影響を及ぼし、それにより日本の政治が左右されるおそれが認められる寄付を行う外国人と言えるでしょうか。 本問において、AはBの父であり、特定の政党の構成員としてのBではなく、父が息子であるBに寄付を行ったに過ぎません。 そして、近親者から政治献金の援助を受けている国会議員が稀有というわけではないので、Aは先述のような外国人に該当しないとも考えられます。
しかし、一年間に個人が献金できる上限額が規正法上150万円であることから、本人の名義により過去7年間に777万円の献金というのは、平均すると年間111万円と上限額の三分の二を占めており、政治的意志決定に十分に影響を与える可能性があります。 Bは現職の衆議院議員であり、かつ法務大臣政務官という大臣を助け、特定の政策及び企画に参画し、政務を処理する事を職務としています。 さらに、法を制定する部署に勤めていることも評価すると、Bは大変重要な役職に就いており、政治に与える影響も大きいと考えます。
しかし、Aが日本に居住している理由がいかなる事情によるものかは不明であることから、献金を行った事情も客観的には判断できません。 加えてAはほぼ半世紀、つまり約50年間という長期に渡り日本に住み続けており、生活実態は国民と同様に思えますが、法的事実としての国籍上、Aが外国人であることに変わりはないことからすると、国民の信頼を害するおそれがあるといえます。 以上より、Aは先述の規範に該当する外国人と言え、Bは構成要件に該当し、これは規正法の濫用とはいえません。 以上より冒頭の結論に至ります。
以上

☆結果☆
 立論の部:第3位 高田早紀(当時2年)
  出場校…中央・明治・慶應義塾・神戸学院・神戸・京都・関西・関西学院・同志社

平成25年度第二回関東学生法律討論会(秋討)【憲法】

日時:2013年10月6日 於・専修大学



Yは、A省に勤務する事務官で、東京都内にあるA省の地方支分部局(いわゆる「出先機関」)において、窓口で一般市民に対応し、主として申請書類の受理業務、 申請者に対する各種連絡業務、申請書の作成等に関する市民の相談にマニュアルに基いて応じる業務等、裁量権のない機械的労務を提供している国家公務員である。 Yは、2012年12月16日施行の第46回衆議院議員総選挙に際し、B党を支持する目的で、同年11月25日、12月2日、12月9日のいずれも午後2時から3時頃にかけて、 3回とも東京都C区内の約50箇所の店舗・住宅の郵便受けに、B党の機関紙、およびB党公認候補者(その予定者)の経歴等を紹介したパンフレットを投函した。 Yは、この行為が国家公務員法第102条第1項および人事院規則14‐7第5項第3号、第6項第7号および第13号に違反するとして、国家公務員法第110条第1項第19号に基 いて起訴された。 事実関係については争いがないとして、Yは有罪とされるべきか否かを論じなさい。

〔資 料〕
人事院規則14‐7 第5項・第6項(抄)
(政治的目的の定義)
5  法及び規則中政治的目的とは、次に掲げるものをいう。政治的目的をもつてなされる行為であつても、第六項に定める政治的行為に含まれない限り、 法第百二条第一項の規定に違反するものではない。
三  特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。
(政治的行為の定義)
6  法第百二条第一項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう。
七  政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。
十三  政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、 あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。

出題:立教大学法学部教授 赤坂正浩

準備中

☆結果☆
 立論の部:第2位 島星矢(当時2年)
 総合の部:第2位
  出場校…駒澤・専修・中央・日本・明治・立教・早稲田

平成25年度第一回関東学生法律討論会(春討)【刑法】

日時:2013年6月8日 於・専修大学



暴走族αの総長であるAは、対立する暴走族βに寝返ったXに対して報復しようと考え、12月上旬頃、同じ暴走族αの 副総長Bに「Xのバイクを見かけたら燃やせ。」と伝えていた。Bは、当初、Aの言葉を信じていなかったが、1月10日にA から再び「Xのバイクを燃やせ!やらないなら、お前をリンチにする!」などと言われて、Aが本気で言っていると信じる に至った。翌11日、Bは、暴走族αに入って間もないCおよびDを呼び出し、「AがXのバイクを燃やせと言っている。 やらないならリンチにする!」と強い口調で伝え、さらに「Xを見つけて、バイクに乗れないように腕か足の骨を折れ!」 と付け加えた。CおよびDは、AやBには逆らえないという心理状態であったことから、しかたなくこれに従うことにした。
1月13日23時頃、CおよびDは、Xの自宅までバイクで行き、Xの自宅駐車場に停められていたXのバイクに灯油をかけて、 火をつけ、サドル部分を焼損させた。この時、Xのバイクは、前方が家から10mほど離れており、右側3mの位置に松の木 が植えられており、左側および後方は1mほど離れてコンクリートブロックの塀であった。
さらに、CはXに怪我をさせなければならないと考えたが、Xは喧嘩が強いとの噂を聞いていたので、「喧嘩しても返り 討ちにあう。ここはこっそりXの家に火をつけよう。」とDに言った。しかし、DはXと喧嘩するのも嫌だったし、家に放 火してXやその家族までも殺すことになっては大変だと思い、「俺はここで抜ける。やりたいなら1人でやれ!」とCに言 い、Cが何か言う前に走って自分のバイクに向かい、直ちに乗って逃走した。Cは自分がやらなければDもリンチにされる と考え、Xの家の裏口ドアに灯油をかけ、火をつけた。ところが、Xの家は耐火建材を使用していたため、裏口ドア下部 50平方センチメートルを焦がしただけで、自然に鎮火した。なお、この日、Xは家族と共に旅行に出かけていたため、 家には誰もいなかった。
A、B、C、Dの罪責について論ぜよ。

出題:専修大学法学部講師 森住信人

準備中

☆結果☆
 立論の部:第5位 野口智之(当時3年)
 質問の部:第2位 西村友海(当時3年)
 総合の部:第2位
  出場校…駒澤・慶應・専修・中央・日本・明治・立教・早稲田