(1)被告人X男は、料理店に勤めるA女と馴染みになり、夫婦約束までしていたが、遊興費が嵩んで借金をしたうえ、両親から別れるように迫られ、だんだんAが重荷に感じられるようになってきた。そこで、Xは、Aに別れ話を持ちかけたが、Aは、まったくそれに応ぜず、話をしているうちにいっそ心中しようということになり、Xも、いったんはそのつもりになった。
その3日後、Xは、その間に心中する意思を失っていたのにもかかわらず、猛毒である青化ソーダを用意して、Aと山中に入り、すぐに追死するかのように装って、Aに青化ソーダを致死量与え、Aはそれを飲んで即死した。Xの行為は、刑法上どのように評価されるか。
(2)上の例で、Xは、白色の青化ソーダと、同色で身分けのつかない無害の粉とを用意し、それぞれ小さな紙に包んで、Aには前者を飲ませ、自分は後者を飲むように細工をした。ところが、山中の現場で、Xは、間違って後者をAに渡してしまった。Aが直ちにそれを飲んだのを見て、すぐに死ぬものだと思ったが、何も起きないので、間違い気づいた。しかし、自分が前者を飲むわけにもいかないので、事情を明かしたところ、Aが憤慨して、結局、両人が別れるに至った場合はどうか。
出題 立命館大学法科大学院教授 浅田和成先生
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