Aは友人Bが自分を避けるようになったのは、Bの彼女Xのせいだと思い込み、インターネット上に開設した自分のミニブログに「Bはあんな援交してホストにみついでいるようなブ○と早く別れればいいのに。X氏ね」などと記載した文章を書き込んで公開した。Bは、その文章を見て腹を立て、Aのブログ管理用のユーザーIDがURLの末尾の番号で、パスワードが生年月日ではないかと推測を立ててブログの管理ページにユーザーIDとパスワードを入力したがアクセスできなかった。そこで、Aも遊んでいるオンラインゲームの方に同じようにアクセスしたところ、こちらはアクセスできたことから、Aのゲーム用のレアアイテムを自分のキャラクターに譲り渡すように設定した後、パスワードを変更してAがゲームにアクセスできないようにした。
Aは、自分のゲームにアクセスできなかったことを不審に思っていたが、Bがハッカーに頼んでAを懲らしめてやったと吹聴しているのを聞きつけ、遊び仲間のC、Dに「Bのやつは最近調子のってるから少ししめてやろう」と声をかけ、Bをひと気のない工場跡に呼び出した。AはBが謝れば許すつもりでいたが、むしろBに食って掛かられたので、A、C、DはそれぞれBを大声でなじり、殴る蹴るの暴行を加えたところ、Bは転倒し頭から出血した。出血を見たDは、このままだとBを殺してしまうのではないかと怖くなり、「俺はもう付き合いきれない。もうやめる」と言って、暴行を続けるA、Cを一旦制止したあと立ち去った。Aもこのままではまずいと思い、Cと目で示し合わせて、BおよびCとやり取りした携帯電話のメールや電話の発着信履歴やブログの記事を削除した。
ぐったりしていたBが起き上がってポケットに手を入れるのを見たCは、Bが携帯電話を取り出そうとしていると考え、Aに「やばいぞ」と耳打ちした。Cは、早く逃走するつもりでAに言ったが、犯行の発覚を恐れたAはBに怒声を浴びせ、未必の殺意をもって落ちていた金属棒を拾うとBの頭部を一回殴打し、頭部の強打による急性硬膜下血腫により殺害した。
A、B、C、Dの罪責を論ぜよ。
出題 専修大学法学部准教授 岡田好史先生
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